2011年4月5日火曜日

緊急事態におけるリスク/不確実性とその対応について

今回の大震災で自分の「災害リスクに対する態度・対応」が非常にクリアになりました。
・地震が起きた後にどのように行動したのか/行動すべきだったのか
・停電によってどのような損害を被るか/許容可能な停電はどれくらいか
・原発事故により放射性物質の拡散はどれくらいあるか/許容可能な被曝量はどの程度なのか
・さまざまな組織・団体・個人から発せられる情報に対してそれぞれどのように評価すべきなのか
・今後どこに居住し、どのように行動し、どのようなリスクを考慮すべきなのか

等について様々考えさせられました。

3.11の地震直後から現在まで具体的に考えて行ってきたことは、以下の通りです。

・まずは徹底的に情報収集する。1~2次情報のみならず、個人の主観的な意見が織り交ぜられた3次の伝聞情報についても、ポジティブだろうとネガティブだろうとむやみに捨てず、自分の判断材料としていったん収集しておく。
(「美人投票」を持ち出すまでもなく、他人の行動パタンが自分に影響を及ぼす場合、「自分がどう考えるか」だけでなく「他人がどう考えているか」も収集すべき情報)

・集めた情報と自分の置かれている状況全体を考慮して、取り得る選択肢の列挙とシナリオをいくつか作る。そして、そのシナリオに沿って行動した場合のメリット/デメリットについて重要度の高いものから思いつく限り列挙して、シナリオの評価を行う。

・シナリオ評価によって序列を設け、2,3個まで絞る。より制約度合いの高い条件から適用していき、たいして全体に影響を及ぼさない条件などは後回しにしておき、1つずつステップを踏んでゆく。

・情報収集→選択可能なシナリオ策定→シナリオ評価→実行、というフローに基づいて、時々刻々と変化していく情報を都度収集してシナリオへの反映を行いながら、その時点で最適と思われる戦術を遂行していく。

後から考えると、当然ながらスマートにすべて行えたわけではなく、何度か間違いに気づいて引き戻したり、考えすぎて判断が遅れたり、それほど必要ではなかった物資を購入しすぎたり、とさまざま反省すべき点はありますが、おおむね全体として自分の判断は間違っていないと思っています(現時点の評価ですが)。

また、ネットで多くの意見を参考にしてきましたが、むやみに「○○する奴は馬鹿だ」とか、根拠もなく「○○という情報は間違い」と断定していたり、非常に極端な意見も散見されました。

個人的なスタンスとして、以下のブログ記事で書かれていることが代弁となります。

自分の意思決定を不用意に他人に委ねない&自分の決断を他人に押し付けない ・・・人によって「受け容れられるリスク」の多寡にばらつきがあるから
「自分で考え、自分の責任で行動する」:福島第一原発事故対策 – 大「脳」洋航海記

つまり、ある事象に対して、「自分がよいと思っている判断」だけが必ずしも正しいとは限らない、というスタンスです。自分の意思決定がある時点や状況においては正しいけれども、別の時点や別の状況におかれている人にとっては、誤りとなるケースが少なからずあります。

また、計量可能な「リスク」と計量不可能/困難な「不確実性」を区別した場合、今回のような大規模な災害は、計量不可能で想定外な「不確実性」に分類されるように思われます。その不確実な事象について予め妥当な判断がどれくらいできるものなのか、正直なところ、難しいと言わざるを得ません。専門家は専門分野における計量可能なリスクについて精確な判断を下すことができます。しかし、専門外の問題が複合的に発生した場合、むしろ、精確すぎる判断によって他の問題の解決どころか、問題を増やす場合もあります。

性別/年齢/居住地/家族構成/職業/精神状態/その他個人的こだわり等、個々人が置かれている状況は千差万別であり、何が正しくて何が誤っているかを客観的に単一評価基準で判断することは難しいと思われます。

だからといって相対主義を決め込んで「何でもあり」というわけではありません。個々人の自己責任で、「ある状況を一定の判断基準に照らした場合、選択肢1, ..., Nのうち最も妥当な解はXである」という思考を積み重ねて、総合的に妥当解がどれかを判断していく努力をする必要があります。

緊急事態はできるだけ起きてほしくありませんが、緊急事態にこそ、リスクおよび不確実性への抜き差しならない対応が求められて、思考力や意思決定力が鍛えられるような気がしました。まだ今回の震災は事態が収束していませんので、引き続きリスク/不確実性への対応を行っていきたいと思います。

なお、リスクと不確実性については、以下の書籍『ブラックスワン』と、池田信夫氏のブログ記事が参考になります。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質

原発事故というブラック・スワン : アゴラ - ライブドアブログ